※この記事は2022年7月15日現在の情報です。

MTBではもう当たり前。
グラベルやトライアスロンなどでもだいぶ普及してきた「1x(ワンバイ)」という方式。
フロントシングルとも呼ばれるこの方式は、フロントディレイラーを排してチェーンリングは1枚のみ、操作するシフトはリアだけという超シンプルなものです。
シンプルでチェーン落ちのリスクが少なく見た目もすっきり。といったメリットがある反面、もちろんデメリットも。
この「1x」と「2x」の両者のメリットを享受できる、革新的なパーツが2022年夏から日本国内でも公式にリリースされることになりました。
ここで詳しく説明をしていきましょう。

革新的なロードバイク用ホイール

まずは見ていただきましょう。
こちらです。

CLASSIFIED CF R35 ¥396,000 (専用カセット付属)

それがこのホイール。
ブランドはCLASSIFIED(クラシファイド)。
ベルギー発のブランドなのですが、メーカーについての詳しくは後ほど。
まずはこの製品について説明していきましょう。

このホイールにできること

最初に、このホイールで何ができるのか?について。
ずばり言うと、

リアハブ(パワーシフトハブ)の内部に組み込まれた2スピードの内装変速機で、フロントディレイラーがなくても2x相当の機能を果たしてくれる。

ということです。
見た目もシンプルでチェーン落ちのリスクも少ない1xですが、シフトのキャパシティーを確保するため、リアのスプロケットはワイドレシオになりがち。
ワイドなスプロケットだと1段ごとの歯数差が大きくなり、細かいギア選択は困難に。
「ちょっと軽く」とか「ちょっと重く」といった細かなシフト操作を実現するには、やっぱり2xの方が優れています。
それを両立するためにリアの外装変速に内装2段変速を組み合わせたのが、このホイールに使用される「パワーシフトハブ」なのです。
内装変速機といえば、シマノのAlfineやNEXUS、ローロフのスピードハブなどをご存知の方も多いと思いますが、内装の名の通りハブの内部でシフト操作を行う方式です。
このホイールに使用される「パワーシフトハブ」と呼ばれるリアハブは、ハブシェル内部に内装2速の「スマートハブ」が搭載されており、ここがこのシステムの心臓部となります。
言い方を変えるなら「フロントディレイラーに変わるもの」かもしれません。
「フロントシングルなのに2x」と言ってもいいのかな?

国内代理店サイトより引用

上の図でもおわかりいただけると思いますが、パワーシフトハブの変速操作は、ハンドルバーに取り付けたスイッチユニットからBluetoothでの無線通信で行われます。
この辺も、僕がこの製品に惹かれた大きなポイントですね。

パワーシフトハブの心臓部「スマートハブ」

3つのモデルがリリース

このCLASSIFIED パワーシフトハブを採用したホイールセット、この記事を書いている2022年7月現在3つのモデルが前後セットの完組ホイールという形で発表されています。

国内代理店サイトより引用

上の写真の3種類。
左はグラベル用で、真ん中と右はリムハイト違いのロード用。
いずれも使用するハブは同じ規格で、お値段も一緒。
上で載せた当店の試乗用ホイールは、真ん中のROAD-CF R35です。
この写真ではリアホイールしか写っていませんが、前後セットでの販売となります。
そしてこの写真ではスマートハブが外されていますね。なんでやろ?
もちろん実際はスマートハブが付いています。
専用カセットも1つ、付属します。
リムはいずれもチューブレスレディ対応のカーボンファイバー製。
公表はしていませんが、安心の大手ブランドへのOEMで作られています。
そう、公表はされていません。

公表は、、、されて、、、いません。

また、このホイールセットには、専用スプロケット(歯数等選択可)、専用スルーアクスルキット一式(リアのみ)、ハンドルバースイッチユニット、充電用USBケーブル、エンド幅計測専用メジャー、チューブレスバルブなども付属します。

現在発表されているのは上記3種類の完組ホイールのみですが、現在フランクフルトで開催中のユーロバイクで、何やら楽しい新製品の展示がされているそうで。
こちらも正式にオファーがありましたらお知らせしますね。

パワーシフトハブのメリット、デメリット

あえてフロントディレイラーを使わず、内装変速を使用する必要があるのか?
パワーシフトハブのメリット、デメリットを考えてみましょう。

パワーシフトハブのメリット
☆ 変速時のチェーン落ちの心配がない
☆ 変速がスピードが速い(約0.15秒)
☆ 高負荷時でも変速可能(1,000wまで)
☆ 脚を止めていても瞬時に変速可能(脚を回し始めた瞬間に完了)
☆ フロントシングルで見た目もスッキリかっこいい!(個人的意見)

逆にデメリットは?
☆ ハブ重量が少々重い
☆ 専用のスプロケットを使う必要あり
☆ 取り付けできる自転車の制限があり

今思いつくことはそれくらいでしょうかね。
もちろん僕も試乗してみましたが、変速のスピードは本当に速い!
従来のフロントディレイラーは操作後にクランクを一定の角度回転させて変速するのに対し、0.15秒で完了してしまう内装変速。
特にゆっくり脚を回している時に変速の速さを感じますね。
残念ながら1,000wの負荷をテストすることはできませんでした。
その日は調子がイマイチでねw

リアホイール重量。やっぱりそこそこあるな。

ハブの重量はもちろんあるのですが、内装シフト式ハブとしては
「まあ仕方ないか」
と思える範囲かと。
その分フロントディレイラーとチェーンリング1枚を外せますしね。
専用スプロケットについては後ほど。

チェーンリングの制限とギアレシオ

パワーシフトハブを使用する際、フロントのチェーンリングは40T以上をシングルで使用する必要があります。
このハブにフロントディレイラーも付けたら無敵じゃね?
なんて皆さんいいますが、それはできませんのであらかじめ。
そしてパワーシフトハブのローギアのギア比は0.686。
フロントが50Tの場合は34.3T相当。
フロント52Tの場合が35.672T相当。
まあまあ、ざっくり2xのロードと同等と考えて良さそうです。
他の歯数でも0.686をかければ仮想ローギアのギア比が計算できますね。
40Tなら27.44
44Tなら30.184
などなど

どんな自転車に付けられるの?

上のデメリットの項でも書きましたが、このパワーシフトハブはすべての自転車で使用できるわけではありません。
2022年7月現在リリースされている、上記の完組ホイール3モデルを取り付けることのできる自転車は以下の通り。

☆ リア12x142mm、フロント12x100mmのスルーアクスル
☆ フラットマウント ディスクブレーキ
☆ ディスクローター径 140mm or 160mm


まあ、ディスクロード、グラベルバイクの今の主流の形ですね。
ただし、リアエンドやリアブレーキマウント部の形状などにより取り付けできない場合もありますのでご注意を。

専用スプロケットが必要です

さて、上記しましたようにこのホイール(ハブ)はあまりに特殊ゆえ、スプロケットも専用のものを使用する必要があります。
内装変速機が内蔵されているためハブの形状が特殊で、一般的なスプロケットは物理的に取り付けできないのです。
そのため、CLASSIFIED社では専用のスプロケットをリリースしています。
そして、上記のホイールセットには専用スプロケットが1つ付属します。
ユーザー様の用途に合うスプロケットを選んでいただく形です。
現在選べるスプロケットの歯数は以下の通り。

11 Speed 単品価格 ¥25,300
・11-27  11-12-13-14-15-17-19-21-23-25-27
・11-30  11-12-13-14-15-17-19-21-23-26-30
・11-32  11-12-13-14-15-17-19-21-24-27-32
・11-34  11-12-13-14-15-17-19-21-24-28-34

12 Speed 単品価格 ¥28,600
・11-28  11-12-13-14-15-16-18-20-22-24-26-28
・11-30  11-12-13-14-15-16-18-20-22-24-27-30
・11-32  11-12-13-14-15-16-18-20-22-25-28-32
・11-34  11-12-13-14-15-17-19-21-24-27-30-34

※いずれもシマノ、スラムに互換

11速11-32Tでこの軽さ

1xの場合はトップ側のギア比を稼ぐために10Tなどの小さなトップギアを使用することが多いのですが、小さいギアではチェーンの角度に無理が出てしまうという問題もあります。
それも11Tからスタートするということで解決しているんですね。

ハブ形状に合わせた専用設計

スチールのブロックから削り出して専用スプロケットまで作ってしまうところに、メーカーの意気込みを感じます。

専用スルーアクスルの重要な役割

このホイールセットには専用のスルーアクスルも付属してきます(リアのみ)
スマートスルーアクスルというこのアクスルは、ハンドルバーユニットからのBluetooth信号を受信し、シフトを行うスマートハブ内に電力を送る役目を果たします。
様々なフレーム規格に対応するため先端のスレッド部は差し替え式となっており、数種類のピッチや長さの先端スレッド部が付属します。

こんなアナタにCLASSIFIED

さて、この製品の機能的なところはざっくりとお伝えできたと思います。
では具体的に、どの様な方におすすめできる製品なのかな?
これもまだ未知数でわからないところも多いなりに考えてみました。

☆フロントディレイラーの操作に不安やストレスを感じている方
性能の上がった最近のコンポーネントでは少なくなったとはいえ、フロント変速はチェーン落ちのリスクもあり、変速するたびに少し緊張してしまうことはあると思います。
何十年も乗っている僕でもそうですので、ビギナーの方は尚更ではないかな?と。
またロードやシクロクロスのレース中にチェーン落ちしてしまったらその時点で試合終了〜。なんて場面もあり得ますよね。

☆ 1xを使用していて不満のある方
特にグラベルバイクでは1xで乗られている方が多いと思います。
僕もそうなのですが、1xでギア比の幅を広げようと思うとワイドレシオのスプロケが必要。
上の方に書いたことの繰り返しになるのですが、上り坂でちょっとだけ軽くしたいときに、1枚分動かしたら急に軽くなりすぎてしまい、欲しいギア比が使えないということも。
そんな時にフロントディレイラーをつけるのもいいけど、この内装シフトにしてリアをクロスレシオにするのはとてもいいと思います。

☆ フロントシングルでスタイリッシュに
まあ見た目の好みは人それぞれですが、フロントにディレイラーがなく、チェーンリングも1枚というスタイルはとてもCool。
それでいて2xの機能が使えるんだからこれは素晴らしい!
僕個人の話ですが、フロントシングルはクランク、BB周りのお掃除がとてもしやすいのも気に入っています笑

ぱっと思いつきで書きましたが、良い使い方はまだいろいろとありそうですね。

最初の取り付けはプロに任せて

機能的な話を聞いて
「ややこしそうだなー」
と思われた方もいるかもしれません。
確かに、今までのロード用ホイールとは違った革新的な新機能を備えたホイール、最初はいろいろと面倒なこともあります。
買ったらそのままポン付けというわけにはいかず、フレームの各寸法を測り、その寸法に合わせてセットアップしないときちんと動作しなくなってしまいます。
そのため僕たち取り扱い販売店は、定期的に特別なテクニカルセミナーを受けて新しい機能や調整、設定方法などを学んでいくことになっています。
先日は初めてのセミナー、勉強会を受けてきたところです。
ですので、ご購入いただいた際やフレームを交換される際には取り扱いショップにて設定をさせていただく必要があるのです。
ただ一度設定、調整してしまえば、あとは普通のホイールと同じように取り付け、取り外しもできますので安心してご使用いただけます。

試乗用ホイールを準備中

当店では、このCLASSIFIEDのパワーシフトハブを体感していただけるよう、試乗用ホイールを準備中です。
いずれはこのホイールを取り付けた試乗車を組む予定ですが、その前にお客様の自転車に取り付けて試していただけるようにしようかと画策中。
上に書きましたように自転車のフレームに合わせていろいろとセットアップする必要があるため、お客さまの自転車に取り付けての試乗は、恐縮ながら有料にする予定です。
その後CLASSIFIEDホイールをご注文いただけた場合はご返金という形を取ろうと考えています。
こちらもまだ準備中ですが、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

CLASSIFIED社について

今回ご紹介した革新的システムを持つホイールをリリースするのがベルギーのCLASSIFIED社。
しらべたところ、僕の専門外の難しい言葉もたくさん出てくるし、間違えたことを書いてしまってはいけないので、代理店サイトより転載させてもらいますね。

CLASSIFIED社の創業は2005年。ベルギー北部、オランダとの国境に近い都市、Turnhout(トゥルンハウト)でサイクリングコンポーネントの開発と生産を行う会社として誕生しました。自動車関連部品の開発経験をバックボーンに持ち、自動車のトランスミッションであるCVTやDCTの実用化に貢献したスタッフがCLASSIFIED社の中心として活躍しています。この経験が、彼らが絶対的な自信を持つリアハブ内でフロントギアに相当する変速を行う“CLASIFIED POWER SHIFT HUB”に活かされています。

数々の自転車関連企業を擁し、多くの有名選手を輩出するベルギーは、自転車文化を機材で支える土壌が整っていました。CLASSIFIEDが比較的短期間で業績を伸ばしたことは、こういった背景があるとともに、そのプロモーションが大きく作用したことも一因です。とりわけプロフェッショナルライダーとのコミュニケーションが独特で、主に引退直後の一流選手をアンバサダーとして迎え、製品開発とプロモーションに役立てています。彼らは現役選手より経験を積んでいるため、製品に対する冷静な批評を引き出せると考えるからです。そして知名度が高く、申し分のない実績は、サイクリストの興味を惹くことにも大きく貢献します。これらのきっかけとなったのは、元世界チャンプ、トム・ボーネン氏のCLASSIFIED社訪問でした。ベルギー出身のボーネン氏は、母国の新進気鋭なメーカーが生み出した新機軸を目の当たりにして、即座にCLASSIFIED社への出資を希望したのです。それだけではなく、同社のアンバサダーにも就任しました。CLASSIFIEDの技術と製品、そして情熱に、世界を制したチャンプは大きな可能性を直感したのでした。

こうしてCLASSIFIED社は、イノベーティブな製品を市場に投入することになりました。研究開発、資材調達、生産、組み立てのすべてをベルギーとオランダで完結させて、製品の製造と品質の管理を徹底して行っています。そして、次世代の自転車シフティングテクノロジーを世界中で展開することを目標に掲げ、日夜、製品の開発に取り組んでいます。
(転載ここまで)

トム・ボーネンも出資してるんですって!

まとめ

革新的なものには、賛成意見や反対意見がいろいろと飛び交うものですが、僕はこういうものが好きなんですよね。
今までなかったものをすごい技術を持った会社が開発して特許を取得し、現役プロ選手がテストを重ねて改良し、完成度の高いものを発売する。
UCIの公認もすでに受けているそうです。
生産、組み立ても100%ベルギー国内の自社工場でされているというのも素晴らしいと思います。
今回このブランドの取り扱いをすることになったショップが国内で10店舗ちょいだそうで、ウチも扱わせてもらうことができて、とても嬉しく思います。
勉強していきますんでご興味のある方、よろしくお願いしますね☆